こんにちは、Graciaの倉庫管理システム(WMS)チーム、PdMの菊地原です。
今回は年始にCTOの林が公開したGracia開発部 2020年の振り返り にある「WMSのリリース」について、詳細を書いていこうかと思います。
はじめに
Graciaでは創業当初より自社で物流倉庫を保有しており、各パートナー企業から送られてくる商品の入庫から発送まで、倉庫にて独自のシステムを用いて行なっています。
また、TANPはラッピングや名入れ等の「ギフトオプション」を豊富に揃えていることを強みとしていますが、サイズも形状も素材も異なる商品群に対して様々なオプションをオンライン・オフラインの両面で対応させ、担当者依存によるバラツキがなく、ギフトとしてのクォリティを担保した状態で実現することは、実は非常に複雑で難易度の高いものだったりします。
これら一連のロジスティクス業務を支えているのは現場のメンバー、そして当社が独自で開発している「WMSシステム」となりますが、今回はギフトロジスティクスの概要と、「WMS(Warehouse Management System)」と呼ばれる倉庫管理システムを一新したお話をしようと思います。
ギフトロジスティクスのミッション
Graciaには「大切なひとときを彩り、人のつながりを豊かにする」というミッションがあります。ギフト文化、他者とのコミュニケーションが時代と共に変化していくことを考え、ギフトにおける体験を向上させるために「TANP」を運営しています。そしてこれらのミッションを達成するため、ロジスティクス部門でもQCDF(※)の水準の向上を目標に様々な取り組みを行っています。
※ QCDF:品質(Quality)、価格(Cost)、納期(Delivery)、柔軟性(Flexibility)。
QCDFの水準向上を目指す上で、ギフトECならではのキーポイントも存在します。例えば下記のような要素です。
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各ギフトシーンに対応したオプションの実現
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多様な商品の確保・管理
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複雑なオペレーションを加味した需要予測
1.各ギフトシーンに対応したオプションの実現
ギフトには様々な習わしや個々人の実現したい演出があり、TANPでも可能な限りそれらに対応すべく同梱・商品加工・ラッピング等の豊富なオプションを用意しています。例えばお歳暮であれば熨斗、記念日であれば華やかな包装紙や名入れ、母の日であればカーネーション等々、各ギフトシーンでは求められるオプションも異なります。
さらに商品はサイズも形状も素材もバラバラであり、Aの商品で対応可能なオプションもBの商品では対応が困難であるということが発生しますので、各商品でどのオプションが実現可能かを1つ1つ判断し、システム上で管理する必要があります。
オフラインでも難易度の高いラッピングであるほど一定の経験やスキルが必要となりますし、サービスの性質上、個別にご要望をいただくことも少なくありません。しかしながら、これらのハードルをクリアして豊富なオプションを実現することは、ギフトECとして必須事項でもあります。
[参考]:https://gra-cia.co.jp/engineer/interviews/01
ギフト市場がいくら盛り上がっているとはいえ、ラッピングが綺麗に整っているか、お客様の個別のご要望がちゃんと反映されているかなど1つ1つ丁寧に対応するオペレーションに踏み切ることができる企業は多くありません。最適解が見えない中で一部の作業を外注すればクオリティの担保やスピード感のある改善が難しくなり、既存の事業がある中で自社対応するにはコストが肥大化し過ぎます。
他社が踏み込めないということは、それが参入障壁でもあり、やりきれば価値になります。Graciaが複雑なギフトロジの最適解を構築することができれば、大切な時間を使って店舗を歩き回ることなく、手間のかかった商品を、より多くの人にいつでも手にしていただける土壌が整います。
2.多様な商品の確保・管理
当然ですが、「欲しいものが無い」ECが利用されることはありません。そしてお客様の嗜好次第ではどのようなものもギフトに成り得ますので、アパレル・食品・雑貨・家電・体験カタログなど、商品カテゴリーとしても多種多様な選択肢を用意しておかなければお客様のニーズに応えることはできません。
現在TANPには約12,000の商品、1,000を超えるブランド(*)を取り扱っていますが、需要は日々移り変わり、世の中では新しい商品が毎日のように生まれ続けています。当社ではロジスティクスメンバーとMD(マーチャンダイジング)メンバーが密に連携を取り、少量多品種における多様な保管形態・入荷形態に対応しながら更なるギフト商品の充実に尽力しています。
※非公開中の商品を含めた累計SKU数・ブランド数。2020年12月時点 。
3.複雑なオペレーションを加味した需要予測
クリスマス、バレンタインデー、母の日など、特定のイベントに連動してニーズが急増するのもギフトならではの特性です。適切な需要予測を行い、基盤となるQCDをコントロールし、新しい施策や次の一手にも踏み込んでいける柔軟性や余裕を確保していくこともロジスティクスのミッションとなっています。「ギフトシーンに合わせた豊富なオプション」の実現により、一般的なECより工程の多いオペレーションを抱えるロジスティクスとしてはチャレンジングな部分でもあります。
特に2020年は新型コロナウィルスの影響もあり、「オフラインで稼働しづらい」状況と「外出自粛によるEC利用の急増」が重なり、対応方法も制限される中、リモートワーク中の本社オフィスを利用してオペレーションラインを複数拠点に分ける、需要予測に対して最低限の人数で稼働する、一時的に簡易ラッピングの割合を増やすなど、様々な工夫を行いました。
WMSのリニューアルについて
さて、当社のWMSについてですが、冒頭でも触れているようにTANPを運営するための関連システムの大部分は社内で独自開発しています。一般的にWMSには「入出庫管理」「在庫管理」「棚卸し管理」「帳票管理」のような機能が内包されていますが、これまで当社では明確なシステムや機能の切り分けはなされておらず、運営に必要な最低限の機能を一つに集めたシステムで稼働していました。(冒頭「基幹業務システム」参照)
多様なオプションへの対応についても、商品への紐付けや在庫管理などの一部オペレーションについてはソフトウェアで効率化されていたものの、大部分はオフラインオペレーションを遂行するメンバーの頑張りにより実現していた面が多分にありました。また、創業時から細かな改修は続けてきたものの、ロジスティクスに関する知識が乏しい中で改善を重ねてきたこともあり、一部の機能についてはリプレイスや新規開発を必要としている部分がありました。
そこで、今回のWMSリニューアルでは、特に下記の項目に取り組みました。
1:ギフトロジスティクスに最適化された個品管理の実現
2:ハンディターミナルの導入によるピッキングの簡略化
1:ギフトロジスティクスに最適化された個品管理の実現
当社のように「商品」と「オプション」をセットで販売する形態の場合、商品の種類ごとの管理ではなく、全ての商品を1個単位・唯一のものとして管理する必要があります。例えば下記のようなご注文をシステム上で管理する必要があり、「名入れ」オプションを選択した場合、任意のテキストを刻印した商品は在庫上唯一のものとして管理しなければなりません。刺繍やメッセージカード、写真の同梱なども同様です。
- Aさんのご注文:「商品a + オプションa(任意のテキスト) + オプションb」
- Bさんのご注文:「商品a + オプションb」 + 「商品b + オプションa(任意のテキスト)」
- Cさんのご注文:「商品a + オプションa(任意のテキスト) + オプションc」 + 「商品b」
これまでは商品ごと、お客様のご注文ごとに最低限の管理は実現されていましたが、次ステップではご注文ごと、商品ごとのオペレーションの進捗状況や工数の可視化等を行う想定をしていたため、それらを踏まえたデータ管理を行う必要がありました。また、今後ロジスティクス拠点を複数設けることも考慮し、下記のようなロケーション管理にも対応したいと考えていました。
- 拠点A:商品a(在庫数10) →賞味期限a(在庫数3)・賞味期限b(在庫数7)
- 拠点B:商品a(在庫数100)→賞味期限a(在庫数100)
リリース時は既存商品に対しても運営に支障の無いよう進めなければならず、神経をすり減らしたところはありますが、現在では上記に挙げたデータ管理を実現し、「どの商品が」「どのような状態で」「どこにあるか」を把握できるようになりました。
データ例
また、注文は一定のオペレーションを通過する毎にステータスが変動し、進捗状況やオペレーションにかかった工数が分かるようになっていますが、これらは定時に自動で集計され、Excel形式で指定の場所にエクスポートされます。エクスポートされた内容は日次・週次の定例でロジスティクス部の正社員全員に共有され、進捗の確認や改善の為の分析資料として活用しています。また、全社に対しても週次定例などで報告を行っています。
Excelイメージ
2:ハンディターミナルの導入によるピッキングの簡略化
商品を棚からピックアップする「ピッキング」業務もこれまではマンパワーで行っていましたが、特に繁忙期には商品の取り違えが発生したり、新しく入社したメンバーが在庫の配置を覚えるまでに一定の経験を要するなど、とても非効率な状況でした。
こちらも今回基盤となるデータが整理されたことによりハンディターミナルの導入が可能となり、ピッキングにおける取り違えの発生、在庫探しによる無駄な工数の発生を大幅に抑えることが出来るようになりました。業務を簡易化することで新しく配属されたメンバーにも担当してもらいやすくなり、通常期より8倍程度にも注文が増える繁忙期では特にその力を発揮しています。
ハンディターミナル画面
最後に
社内としてはチームでの大規模開発の経験がほぼ初めてということもあり、進行の知見がなく大変なところはありましたが、無事に障害を発生させることもなく新たな体制に移行することができました。しかしながら、TANPの根幹とも言えるロジスティクスや基幹業務システムにはまだまだ改善の余地があり、ソフトウェアだけでなく、新たなハードウェアの導入による効率化も検討段階に入ってきています。
EC開発だけでなく、社内ロジスティクス全体を支える大規模な開発に携わることができるレアな環境でもありますので、ご興味を持っていただけた方は是非ご応募ください!
お待ちしております!
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編集:広報